2015-01-15

敗戦70年と象徴天皇制の70年を撃つ 2・11反「紀元節」行動への参加・賛同の呼びかけ



 二〇一五年、私たちは敗戦七〇年目の年を迎えようとしている。

 すでにマスメディアでは、戦後七〇年を意識したキャンペーンが始まっている。この一年、日本の戦後史とその評価をめぐって、さまざまな言論が登場するはずである。そこで、いわば戦後の「総括」の場がつくり出されることは明らかである。

 安倍首相は、七〇年目にあたって「安倍談話」を発表したい意向だと言われている。しかし安倍政権においても、右派が期待するような、「従軍慰安婦問題」や日本の侵略を認めた「河野談話」や「村山談話」などを否定する談話を出すことは、事実上不可能だろう。そうではなく、それらを「継承する」と言いながら、あたかも新たな談話を上書きすることで、実質的にそれらを骨抜きにする方向がめざされるのではないか。そしてそれが、植民地支配やアジア太平洋戦争に対する日本の責任に対する言及を欠き、自国中心主義的な「未来志向」を謳うものとなることも明らかだろう。

 一九九五年、敗戦五〇年目に出された「村山談話」や「国会決議」は、もとよりきわめて不十分なものでしかなく、それどころか「談話」について解説した村山首相は、「天皇に戦争責任はない」とわざわざ明言していたのだ。しかし、これに対して右派のバックラッシュが巻き起こった。そしてその先頭に立っていたひとりが、ほかならぬ安倍だったのである。

 七〇年目を区切りとして、さまざまな場面において、日本の戦後を向こう側から総括し、平和主義や基本的人権など「戦後的価値」を一挙的に清算し、国家主義・強権的方向で「戦争をする国家」への全面的転換を果そうとするのが、安倍の進める政治に他ならない。そしてその道が、今回の衆院選における「勝利」によって「国民の信任を得た」といういい方で、より加速されようとするだろう。

 他方、この四月には、明仁天皇夫婦が、パラオを「慰霊訪問」するという。かつて日本の「委任統治領」であった南洋群島のひとつであるこの地は、アジア太平洋戦争中、三か月にわたるペリリュー島の凄惨極まる消耗戦で、日米両軍に大量の死者を出した場所である。未収集の大量の遺骨も放置されたままというこの地での天皇の「慰霊」行為は、悲劇の戦場で「追悼」する天皇、「戦争の死者に思いをはせ、戦争の悲惨さを心に刻む天皇」といった文脈で描き出されることになるだろう。しかし、そこでは、その死者を生み出した戦争、その戦争をおこした近代天皇制国家の責任は、決して問われることはない。

 死者は国家がひきおこした戦争の被害者であるというより、なによりもまず、いまの「平和」をもたらした「尊い犠牲」なのだ、だから国民こぞって追悼しなければならない。天皇を先頭に作り出されるこうしたムードは、「お国のために尊い命を捧げた英霊」を、国が顕彰しなければならないという「靖国」の論理と、「国家による死者の利用」という点でつながるものである。それは、その地における具体的な死者と結びつけられるがゆえに、きわめて強固な政治力を発揮するだろう。

 明仁天皇は、即位以来、東南アジアや中国などへの「皇室外交」、沖縄や広島・長崎、東京下町、硫黄島、サイパンなど、戦争に関わる加害と被害の地を精力的に回り続けてきた。八・一五における「全国戦没者追悼式」も含めて、国家による「追悼」とそこでの天皇の行為は、つねに国家の戦争・戦後責任を解除し、問わなくさせるための儀式でしかなかった。さらに、「東日本大震災」以降、三・一一が、国家の原発推進政策と原発事故の責任を解除させるための天皇儀式の日ともなっている。

 新自由主義政策のもとで拡大する「格差」、大企業や富裕層への優遇と民衆生活の破壊は、この社会に深刻な亀裂を生みだしている。あらゆる分野での国家による「棄民」が進んでいる。こうした分解を観念的に包摂し、「日本」の「国民」として統合する役割は、やはり天皇に与えられているのだ。こうした点において、天皇と安倍政権の役割は「分担」されている。しかし同時に、われわれは、折りに触れて現われる天皇と安倍政権との「齟齬」についても注目していかなければならない。それは少なからぬ「リベラル派」のように、安倍政治を「牽制」するために天皇発言を持ち上げたいからではない。戦後象徴天皇制の現在と、その再編方向をめぐって現われている支配層内部の矛盾が、そこにあらわれているからにほかならない。現天皇によって、二五年以上にわたって重ねられてきたそうした役割を、敗戦七〇年と重ね合わせて、われわれの視点から総括し批判する運動をつくっていかなければならない。

 敗戦七〇年の反天皇制運動の第一波として、私たちは例年通り、二・一一反「紀元節」行動の準備を開始している。多くの方の参加・賛同を訴える。
 

敗戦70年と象徴天皇制の70年を撃つ 2・11反「紀元節」行動
【呼びかけ団体】アジア連帯講座/研究所テオリア/立川自衛隊監視テント村/反天皇制運動連絡会/「日の丸・君が代」強制反対の意思表示の会/靖国・天皇制問題情報センター/連帯社/労働運動活動者評議会